28話 強化合宿Ⅰ
今日から3日間、強化合宿が行われる。悪魔を使用するにあたっての身体強化や、悪魔のコントロール技術などを身に付けるための合宿だ。クラスごと、と言っても学年に1クラスしかないが、集まって2泊3日泊まり込みで行われる。もちろん、学院の敷地内で。全寮制だし、自分の部屋に帰ってもいいと思ったのだが、なんでもクラスの親睦を深める為だとか。
自分の教室に集まってから体育館に移動し、強化合宿開始。その後完備されえいる宿泊施設に泊まる。という流れだ。
「なー、さっき配られたしおり見た?」
「うん、見たよ?」
「ええ、反応それだけぇ…めっちゃ厳しない?」
「いや、別に…」
嘘だろ…と言いながら机にうつ伏せになった。その様子を見る限り紫は正直やりたくなさそうだった。楽しそうなのに勿体ない。
「なーに話してんだ?」
「紫がハードだって言うんだよ」
「えー、そうか?楽しそうじゃね」
「この脳筋ども…」
こういうイベントの時毎回御礼、先生がドアを勢いよく開いて登場した。分かってはいるもののいきなり来られると怖い。どうにかならないものか。
「さー早く席につけー説明するぞー」
1日目と2日目の午前は身体強化。悪魔のチカラによって鍛える部分は違うが、ジムにあるような器具を使って筋トレをする。
2日目の午後と3日目は悪魔との相性を高める。1日目に鍛えたことを生かして得意な部分を伸ばしていく。また、応用して使えるチカラを目覚めさせる。そして、コントロールできるようにする。
という内容だった。なかなかハードな内容だが、この3日間の結果は成績にかなり反映されるらしい。全力でやるに限る。
俺達は早速体育館に移動した。
体育館に着くと、1人ずつプリントが配られた。そこには自分に必要なメニューが書かれていた。俺は元ニートで運動していなかったことに加え、悪魔が2匹いるという最悪なコンディションの為、人1倍やる事が多い。とりあえず基礎体力をつけなければいけなかった。
まず腹筋と腕立て伏せをした後、ランニングマシーンで1時間走り続け、何十キロもあるダンベルを持ち上げる。これを今日の分が終わるまでずっと繰り返した。
最初に勢いよくやりすぎたせいで、後半になるにつれてペースが落ちてくる。ペースが少しでも落ちると、特別講師として呼ばれたボディービルみたいな筋肉を持つ人達に怒鳴られる。今日だけで何回怒られたか分からない。こんなハードなものが後2日もあるのかと思うと吐き気がした。
日も暮れて空がオレンジ色に染まってきた頃、自分のメニューを終わらせて帰り始める人がでてきた。俺は今からダンベルを持ち上げなければいけないのに、羨ましいぞと思いながらランニングマシーンを降りてペットボトルを手に取った。
「やぁ、順調~?」
そう声をかけてきたのは紫。ペットボトルを元あった場所に置く。
「あとダンベルだけ。足腰ガッタガタなんだけど…」
「根性ねぇなぁ」
そう言って紫の頭に手を置いて話しかけてきたのは茅秋。
「何年引きこもってたと思ってんだ」
「しーらね。まぁ、葵に持久戦持ち込めば勝てるって事だよな」
体力が無いことを馬鹿にして言ってくる。この合宿で1番の成績をとってやると、そう誓った。
2人はニヤニヤしながらお先に、と言って帰っていった。俺も最後の力を振り絞ってダンベルを上げ、体育館を後にした。
ねぇねぇ、主大丈夫かなぁ。
自分の主を信じるのです。
でも、このままじゃ僕達が前面サポートしないと主死んじゃうよ。
きっと主なら大丈夫。やり遂げてくださいます。
まぁ、なんとかなるかぁ~。
後は主に任せましょう。
そうだねぇ。主、頑張って。
私達が応援しております。
今夜は、よく眠れた。