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​00話

  『12歳以下の男児は今回の戦争に出てもらう。生きるか死ぬかはお前らの実力次第』

 

    これは、6年前のある戦争の時に出された制度。『男児は戦争に参加せよ』と、こんな無茶な制度有り得ないと誰もが思うだろう。ましてや12歳以下の子供だ。でも、俺……いや、俺"達"は違った。俺と撓……俺達はスラム街では有名なゴロツキ。名を聞くだけで皆震い上がるため、誰も近寄って来ない。つまり、強い奴と手合わせしたくてもできないのだ。そんな俺達にはピッタリの制度。勿論、 彼と共に参加した。それからポツポツと参加する男児は増え、戦争勃発の数日前には全員が参加していた______

 

    そしてとうとう戦争を相手国に仕掛ける日がきた。基地へ行くと直ぐに指示が出され、支度に取り掛かった。準備をさっさと済ませ、彼を探す。相手も自分を探していたようで直ぐに見つかった。

    『ねぇ、どっちが強いかここで決着付けようよ』

    『おう、受けて立ってやる』

    『じゃあ、どっちが楽しく相手国の兵を多く殺せるか勝負ね!』

    『ああ』

相変わらず撓は思考が狂ってやがる。でもそこが俺と気が合う理由なのかもしれない。

    『それでは相手国へ向かう。自分の位置につけ』

やっと………やっと時間だ。待ちに待ったこの日。俺は刀を2振、彼は銃と刀を持って出発した______

 

    大砲の音

    銃が発砲した音

    血が飛び散る音

    人の悲鳴_____

    俺はどの音にも何も感じなかった。いや、違う。正確には感じられなかった。だってその音の原因を作っているのは殆ど自分なのだから。俺達はどんどん殺した。殺して、殺して、殺して………そういや、競い合うとか言ったな…けど、そんなこともうどうだって良い。手当たり次第殺してけば良いんだから。

    無我夢中で斬っていたとき、自分の後方から聞き慣れた声がした。何があったのか、全く検討がつかない。その声の持ち主は撓だったから。彼は悲鳴を上げるような奴ではない。彼は大丈夫だと頑なに信じ、悲鳴が聞こえた場所まで向かった。

 

    彼のところへ向かうと敵は見えなかった。ただ、傷を受け倒れている彼の姿があった。サーーッと血の気が引いて行くのがわかる。『彼が死んでしまう』それだけは嫌だ。他に何が無くなってもいい。ただ……ただ彼がいなくなることだけは……!俺は無我夢中で彼の元へ行き、彼の体を抱き締めた。

    『大丈夫か!?何があった!』

    まだ微かに脈はあるが虫の息。助かるかどうかはわからないが彼を唯一の肉親である医師の祖父のところへ連れていこうと彼を背負い、無我夢中で走った。

    『あお…い』

    『えへへ……ごめ…ね。ドジ…ふんじゃ…た』

    『謝るな!お前は俺が…絶対に助けてやる!』

    その時だった。彼のことしか見えていなかった俺は後ろから忍び寄る敵に気付かず、右目を後ろから刀で突かれてしまった。余りの痛さに声を発することすらできない。そうか……彼はこんなにも痛かったんだ……それなのにも頑張って戦って……俺は右目を失い、視界がぼやけても走り続け、祖父のいる場所へ向かった。

 

    『これはもうダメだ』

    『………は?』

    『葵。お前が撓のことを思う気持ちはよく知ってる。だが、見て見ろ出血が多すぎるし、傷が深い。寧ろ、ここまで生きて来れたことが奇跡だよ』

    嫌だ………彼が死ぬ?そんなの考えられない。

 

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌ダいやだイヤダ!!!

 

    『ほら、こっちに来なさい。お前も重傷じゃないか』

    『嫌だ!撓が死ぬなら俺も死ぬ!』

    俺は何が何でも祖父を説得しようとした。彼を救えないこと彼を守れなかったこと_____俺は自分で自分を攻めた。

    『あお…い………そん…な顔…しない……で…わら……て?…僕の……こと…えが…でみ……おくっ……て……よ』

    『嫌だ!俺が絶対助けてやるから待ってろ』

    『うっ………さいな……いつ……も……僕…の……こと……ばっか…………さい……ごく…らい……僕の……話………きい………て……よ……』

『………………なんだよ…言ってみろよ』

 

『______________』

 

は?今、なんて_____

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