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27話 勉強会

【弾丸入木】

 

『先輩!今日勉強教えていただけませんか?』

 

『いいよ』

 

『わー!ありがとうございます!少し人数多いんですけど、大丈夫ですか?』

 

『それなら紫をつれてく』

 

『閼伽磐先輩はいいんですか?』

 

『ほら、あいつ馬鹿だから(笑)』

 

『そうなんですか(笑)』

 

『今から行った方がいい?』

 

『あ、できたらお願いします!』

 

『了解』

 

    弾丸入木とのチャット画面を閉じて紫との画面を開く。

【紫】

『弾丸入木に勉強教えろって言われたんだけど、お前も来ない?』

 

『おーいくいく。今丁度勉強会してた所だから1人連れてそっち合流するわ』

 

『了解。弾丸入木の部屋にいる』

 

『りょーかい』

 

 

    紫とのチャット画面を閉じる。持っていくものが思い浮かばなかったからとりあえず差し入れのジュースと筆記用具があればいいだろう。高等科と中等科の間に売店があったはずだから、そこで買っていこう。

    ポケットにサイフとスマホを突っ込んで筆箱を持って部屋を出た。

 

    ピンポーンとインターホンを鳴らす。寮の部屋全てにインターホンが付いている。付ける必要性があったのかは疑問に思う時もある。

    そんなことを考えていると鍵を開ける音がして弾丸入木が出てきた。

    「来てくれてありがとうございます~。部屋狭いですけど、上がってください!」

    「紫は誰か連れて後から来るって」

    「おお、誰なんでしょう。とりあえずわかりました!」

    俺はジュースを弾丸入木に手渡して部屋に入った。部屋には撓、白金と蒼天がいた。あと、知らない人が一人。やけに蒼天に似ているという印象を覚えた。

    「あー、葵~助けてぇ」

    「どうした」

    零ちゃんの教え方難しすぎてわかんないよーと抱き着いてくる。零ちゃん?と思ったが、確か白金の下の名前が零だったことを思い出す。

    「貴方の理解力が低すぎるんですよ…こんな問題小学生でもやればできますよ」

    「零ちゃんが頭いいだけでしょぉ」

    白金ってこんなキツイ性格だったっけと思いながらも、とりあえずどこが分からないのか聞いて教える事にした。元々撓は頭がいい。まどろっこしく説明せずに淡々と説明すればわかる。俺の説明で分かったのか、笑顔でありがとー、と言ってくる。

    説明が終わると丁度弾丸入木がジュースを持ってきた。ありがとう、と言って受け取る。

    すると丁度インターホンが鳴った。きっと紫が到着したのだろう。俺が出るよ、と言ってドアを開けた。そこには紫と、紫が言っていた人であろう人がいた。

    「差し入れにお菓子買ってたら遅くなっちった。こいつは1個下の鎬春靄。仲良くしてやってや」

    鎬春靄と呼ばれたその子はペコリとお辞儀をした。髪や目の色が紫にそっくりでくるんと巻いたアホ毛が特徴的だ。制服をかなり着崩してはいるものの、おっとりとした雰囲気を醸し出している。

    2人が入ったあとドアを閉めて鍵をかける。すると、紫の声がした。

    「おー、知らん子ばっかおるなぁ。でもみんなごっつ可愛ええ…」

    「ねぇ、そんな事言ったら引かれるでしょ…」

    「先輩方!学年ごとに別れてやりませんか?」

    「あ、それいいかもな」

 

    撓は俺、或賀と白金は鎬、蒼天双子は紫が見ることになった。髪型は違うものの全く同じ顔の蒼天に紫は興味津々にちょっかいを出している。

    お昼時に、弾丸入木に昼飯をご馳走になった。簡単なものしか作れなかったけど、というセリフとともに出てきたパスタはとても美味しかった。こういう、料理ができるやつがモテるんだろうなと思った。

    それから俺達は夕飯までご馳走になった。中学生組はまだやっていくとかで、帰りたそうにしている白金を残し、高校生組の俺達は帰ることにした。

    ドアを開けると、インターホンを押そうとしていたであろう人が1人立っていた。昨日見た、綺麗なオレンジの髪を持っている。昨日は帽子をかぶっていて分からなかったがどうやら地毛は茶色で、毛先を染めているようだ。

    「あれ、君昨日…」

    「なんのことでしょう。部屋に入りたいので失礼しますね」

    彼は俺の言葉を遮るようにそう言うとさっさと中に入ってしまった。

    「今の子めっちゃ可愛いですね」

    「まぁ確かに女顔やったなぁ。葵、知り合いなん?」

    「いや、昨日ぶつかった子がいて。似てたからそうかなぁって思っただけ」

    「けっこう特徴的でしたからねぇ、彼女」

    「えっ、彼女!?今の子オンナノコなん?」

    鎬がサラッと“彼女”なんて言うもんだから開いた口が塞がらない。

    「だってここ、男子校やで?」

    「男の子っぽい振る舞いしてたけど、明らかに女性の身体だったじゃん」

    「今のでよお分かったなぁ…」

    そんな、カノジョなのかカレなのか、分からないあの子のことについて話しながら部屋に戻った。

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