top of page
10話 実技試験
悪魔を召喚したあの日に、担任は5月になったら実技試験があると言っていた。多方、生徒同士で戦うのだろうと予想し、各々身体を鍛え上げ、今日というこの日を待っていた。
かくいう俺も実は楽しみにしていたりする。他人と何かを競い合うなんてことは何年もやっていなかったため、とても楽しみにしている。
いつものようにガラッと乱雑にドアを開け、担任が入ってくる。
「えー、前から言ってあったと思うが今日は実技試験だ。各自体操着に着替え、競技場へ行くように。行き方は分かってるな?」
それだけ言うと点呼も取らずに出ていってしまった。
俺、茅秋、紫は体育の時と同じように更衣室へ向かう。その間もずっと試験のことを話していた。
「今年から導入されたんだろ?どんな事すんのかなぁ」
「俺が聞いた話だと学校全体でごっちゃになって戦うらしいで!」
「悪魔と契約したのは今日の為でもあるとか…。今日の試験で適性を判断するって話も出てるみたいだよ」
この話も全ては噂で聞いたものである。どれが真実でどれが嘘かは実際にやって見るまでわからない。それがまた俺達をワクワクさせる。
着替えが終わり、競技場へ行こうとすると先生らしき人に止められた。ちょっといいかな、と言われたので二人に先に行っててくれ、と言ってついて行った。
話は単純だった。仮にも生徒会長という立場である俺から開会の言葉を言ってほしい、という事だった。もちろん、始めは断った。俺が人前で喋れる訳ないし、それに生徒会長と言っても勝手にさせられただけだ。そんな責任感のあるような人ではない。それでもなんとか…原稿は用意してあるからさ、と言われ断りきれずに承諾してしまった。
じゃあ、と言われ案内されたのは競技場の舞台裏。目の前にある階段を上れば直ぐにスピーチ場所だ。開始の10分まえだから入っておいてね、と原稿用紙を手渡され、先生はどこかへ言ってしまった。
階段を上り、眼下に広がる広い敷地にあるのはとても大きい競技場。それはまるで
ここで時代、国を言う
のコロシアムのようだった。真ん中をリングとし、その周りをぐるっと観客席で囲まれている。どう見ても全校生徒が集まっても席がうまる予感がしない。なぜこんなにも大きな競技場を作ったのかは分からない。
用意されていた椅子に座り、時間を待つ。
__今から試験を始めます。今から、ペアを発表します。詳しくは配られたプリントを見てください__
6年がいる所ら辺を見ると担任らしき人物がなにかプリントを配っている。紫はトーナメント制と言っていたが、どうやらそうではないらしい。
__生徒会長からの挨拶です。皆さん起立しましょう__
アナウンスが流れると観客席に座っている生徒が一斉に立ち上がる。ざわついていた会場もシーン、と静まった。
俺は緊張で震える手を抑え、立ち上がった。原稿用紙を風で飛ばないように側にあった抑えで抑える。マイクのスイッチをオンにし、声を振り絞る。
『__生徒会長の白須です。今日は皆さんの持つ力を最大限発揮できる日です。悪魔の適性検査の一貫となっていますので、全力を尽くしてください。皆さんの活躍を期待しています__』
話が終わり、階段を降りる。会場からは大きな拍手が聞こえる。緊張が解れたと思うと、身体に力が入らずその場に座り込んでしまった。
後ろで小さく無機質な声でアナウンスが聞こえる。
__1番。6年白須葵vs6年閼伽磐茅秋。呼ばれた生徒は下まで降りてきてください__
ああ、俺は茅秋と戦うのか…。
近くにいた先生に抱えられ、保健室まで運ばれそうになったが、緊張が溶けて安心しただけだから、大丈夫です、と言って自力で競技場まで行った。
造りはコロシアムそのままだ。俺は選手がリングに入る時に通る通路に立たされた。目の前の通路には茅秋がいた。
__試験の説明をします。まず、ゴングが鳴ったら入場し、両者悪魔を呼び出し、憑依してください。それが完了したら試験の開始の合図となります。制限時間は10分。どちらかが戦闘不能になったら試合終了です。全力を尽くしてください。それでは選手入場__
9話へ 5月ページへ 11話へ
bottom of page