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05話 友情
その音の正体は壊れたロボットだった。ロボットはまるで人間かのように上出来だった。透き通るような肌も、赤く可愛げのある目も、誰もが憧れるであろうサラサラな髪も。まるで生きた人間の外側を使っているようだった。
「おい、お前誰だ?」
「ボク…ワタシノコトォ?…ダ…れ…オレ…?アレッ…ギッガッガガ」
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
『体温認識、音声認識稼働。目標2名。攻撃ヲ開始シマス』
そう言うとロボットはすごいスピードで追いかけてきた。
「逃げろ!」
俺達は一目散に逃げた。相手は身体中を展開して武器を出し、攻撃を仕掛けてくる。こちらはただの生身の人間だ。勝機なんてこれっぽっちも存在するわけもなく。
でも俺は。もう誰一人として友を傷つけないと心に誓った。もしかしたら、あの方法ならば助けられるかもしれない。あのバケモノに勝てるかもしれない…っ!
「なぁ、茅秋。少しの間だけアイツを止められるか?」
「お前が何考えてんのかはわかんねーけど、勝てるんだな?」
「任せろ」
「了解!でもこっちはなんも持ってねーんだぞ?早くしろよな」
「ありがとう」
___俺は茅秋を助けたかった。
___でもこんなに汚れてしまった手では助ける術もわからなくて。
___考えても考えても。
___友達を助ける方法。
___それだけがわからなかった。
___ただ簡単なことなはずなのに。
___俺には理解することが出来なかった。
___思いつくことが出来なかった。
___俺は茅秋から見えないよう、角に入った。
___俺に出来ることはこれしかない。
___これであいつを助けられる…!
い…ヤだ
ダレもきズつけtないのにっ…
「茅秋!頭下げろ!」
茅秋の上に刃が降ってきた。その刃は敵の喉元を狙った。しかしその一振りはギリギリのところでかわされてしまった。
「お前…その刀どうしたんだよ」
「まぁ、色々あってな。とりあえず茅秋は俺の後ろに下がってろ!」
そして俺は言った。茅秋に聞こえないよう小さな声で。今度こそ守る、と。
俺は必死で戦った。しかし相手のどこを斬ってもすぐに再生してしまう。
コレはもはやロボットなのか。ロボット以上のものじゃないのか。自身で修復できるロボットなんて今の科学技術じゃできないはずじゃないのか。そんなことを考えながら戦っていると返り討ちにあってしまう。俺は無心で友を守るためだけに戦った。
いくら修復可能なロボットとはいえども既に直せないほど壊れていたんだ。いつかつかれて_ロボットにそんな感情があるのかなんて知らないが_勝機が見えてくるのではと考えた。
敵が攻撃を仕掛けてくる前にその機械を削ぎ落とす。そしたら敵はまた再生して。その繰り返しだった。しかし勘は当たったようで。そんなことを繰り返していたら再生開始時間、再生時間共に少しすつ時間がかかるようになってきた。そうすれば至近距離で攻撃ができる。
今がチャンスだ…!と、そう思った瞬間。
ザシュッ!
いつの間にか伸びていた敵の刃に腹を斬られた。
「ウッ…くっそ…」
「葵!大丈夫か!?」
「大丈夫…茅秋は俺が守るから…っ!」
さすがの俺も疲れ果てていた。俺は力を振り絞って敵の腹も斬ってやろうと思ったその時。
「「僕の大切な人に手を出すなんて許さないッ…!!」」
敵の胸元に穴が空いた。それは2本の刀だった。その刀は敵の体を真っ二つに引き裂いた。あれだけ苦労したのに敵は呆気なく動かなくなってしまった。
「葵、大丈夫?」
「先輩、大丈夫ですか?」
突然のことに途方に暮れていた俺に2人が声をかけてきた。撓と弾丸入木だった。
いつからそこにいたのか、何故ここにいたのか、聞きたかったが長い間動いていなかった身体は疲労に耐えられなかった。
俺はその場に倒れ込み、茅秋、撓、弾丸入木が駆け寄ってきたところで俺の意識は途切れた。
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