31話 地下
体育館を出ると、裏庭に回った。そして物陰に隠れていた扉を開ける。ずっと前から存在自体は知っていたものの、どこに繋がっているのかは知らなかった。扉を開けたその先には、真っ暗な闇が広がっていた。
扉の向こうの、何百段もある階段を蝋燭の灯り1つで降りていく。12人もいる為、後ろの方にまで光が届いてこない。微かに漏れる光を頼りに下ってゆく。その間、誰も喋ることは無かった。
階段の1番下まで来ると、錆び付いた扉があった。そして、急に理事長が振り向いて口を開いた。
「…これから君達はここで生活してもらうことになるよ。本校舎に比べたら居心地が悪いかもしれないけど…頑張って」
そう言うと再び前を向いて扉を開けた。
中は階段のような怪しい雰囲気ではなかった。きっとボロいのだろうと、覚悟していた自分が馬鹿みたいだ。本校舎と全く変わらない綺麗な内装だった。なんでも、生徒が心地よく暮らせるようにする為だと言う。
俺達はたった1つしかない特別教室に入った。そこには12人分の机と椅子、担任と思わしき男性がいた。理事長はまたね、と言うと出ていってしまった。
「廊下側から、学年順に座れ」
突然男が言った。言われた通りに席につく。
「今日からお前達の訓練は今までとは違う。急に難しくなる。付いてこれない場合は契約を破棄させるからな。勿論、勉学は今まで通り行う。ただ、全学年同時進行で行うため、解説はしない。予習復習を忘れないように。悪魔側の事情で授業開始は1週間後。それまでに地下の寮に荷物を移しておけ。以上」
それだけ言うと出ていってしまった。随分とつまらなそうな男だ。それに、契約の破棄だなんて、そんなこと可能なのだろうか。きっと脅しだろう。みんなそう思った。
名前も言わずに出ていった男に唖然としながらも、一旦地上に戻って荷物の整理をすることにした。
一言で荷物を移すと言っても、それはとても大変なことだった。元々ものが少ない俺はまだいい方だが、荷物の多い奴らはとてもしんどそうだ。何百段もある階段を何度も何度も行ったり来たりしなければならなかった。
早々に力尽きる奴らもチラホラと出始める。流石に1日では終わらなかったので、手が空いたら手伝ってやろう。
そうしてお互いに助け合って過ごした1週間後。授業が開始された。
「まず手始めに、お前らの身体能力を見させてもらう。夏期合宿でどれだけ強くなったか、見せてみろ。2人1組のペアになり、トーナメント制で戦ってもらう。ペアはこちらで考えておいた」
そう言うと黒板に組み合わせが書かれた紙と体育館までの地図を貼って出ていってしまった。と思ったらドアが開いた。
「言い忘れたが、10分後に集合」
そう言って今度こそ出ていった。
「なー、ぶっちゃけこのクラスどう思う?」
「んー、大変だなぁって」
「他の子とかは平気そうやけど、茅秋、テストどうすんの。解説なしやで?」
「そこはまー、、頼むわ」
「また1週間付き合うのか…」
「なんかあの先公遅れるとうるさそうやしとりあえず行こうや」
「そうだな」
そして俺達は駆け足で体育館へ向かった。